何もかもクライアントの言う通りにするのがデザイナーではない

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何もかもをクライアントの言う通りにアウトプットするのがデザイナーではない。

昔から、見る人が満足するデザインをするのが良いデザイナーだ、という考え方に納得がいかないのだ。誤解を恐れずに言えばそれはデザイナーがデザインを放棄することに近い。デザインはデザイナーの意志であり、デザイナーはこの世に意志を描き出すのが仕事だ。「見る人を満足させ、尚且つそこに意志と未来を描き出すのが真のデザイナーだ!」と多くのデザイナーは言うだろうけれど、それは叶わない理想だ。

なぜなら、クライアントが常に正しい目を持ちデザインの良し悪しを判断できるとは限らないからだ。そのデザインによって人の暮らしがどうなるか、世の中はどう変わるのか。そういう事を考える専門家がデザイナーなのだ。そしてこの専門的思考は「生活者目線」のそれとは全く異なり、普通に生活していて身に付くものではない。「クライアントや消費者の意見」と「専門家の意見」を混同してはいけない。決して「言われた通りに作ること」がデザイナーの仕事ではないのだ。デザインはクライアントや消費者に任せるには重要過ぎる。歴史や経験の上にある専門家の判断を信じても良いのではないだろうか。


2020年東京五輪に向けて新国立競技場やエンブレムのデザインが決まったり決まらなかったりしているが、これらに関して、異常なまでのデザイナー叩きが本当に悲しく、つらい。デザイナーとノンデザイナーの間に大きな溝が出来ているのを目の当たりにしながら、これからのデザインの在り方を想っている。